放尿念仏

五香(千葉県松戸市)近くに住むあるばくち打ちの男がいました。
ある日、よっぱらって路上で足元も定まらずふらふらとし、やっとのことで身を支えながら、ジャー、ジャーと大放尿を始めました。朦朧としてふっと頭を挙げると、弁栄上人がその男のそば近くにいらっしゃり、あわてふためき、放尿を止めることもできずそのまま片手で合掌しながら、
男「ああ、お上人さんでしたか、お上人さんでしたか」と云いながら放尿相続の中、声高らかに
男「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と称えました。
上人は後日、このエピソードを話されて、
「よく世間で、私も念仏申したい。信仰は結構だと思うが、どうも日々の家計に追われて、ちょっとその暇がないので、などという者がいるが、それは大きな過りである。実際に申したいという心があれば放尿しながらでも申されるではないか。芸者買いでも悪い遊びでも、初めからそんな暇が定められているわけではない、日々忙しい中から各自が上手にその暇を作り出しているではないか。申したいという真実心のないものには、何年経っても申される暇なんかありはしない」と。

(『ミオヤの光 縮刷版第2巻』186頁参照)