弁栄上人に影響を受けた人物

弁栄上人高弟 鈴木憲栄

「お側に近づいて」 鈴木憲栄

私は古来、三昧発得や見仏ということは、徳本上人の御伝記などにあることは承知していたが、現代の人でそんな尊い方がおられるということが不思議に思われたので、大谷仙界師に
「現代にそんな人がおられるのでしょうか、又そんなことが得られるのでしようか」と尋ねると、師は、弁栄聖者が御出家後、あるいは筑波山に籠って念仏し、あるいは降り積む雪を物ともせず掌灯苦行して念仏せられたことを話されたので、私はすっかり感激してしまった。
そこで、講習が終ってから聖者に拝謁することをお願いし、(知恩院)勢至堂の奥座敷の御休憩所へ案内していただいた。聖者はお書きものをしておられたが、仙界師の御紹介によってこちらをお向きになった。私は隣の座敷から三拝をすると、どうぞどうぞと仰せられて、お止めになろうとした。三拝がおわると、私の膝の向うまでお出ましになった。
聖者はその時、

「鈴木さんあなたは如来様が拝めますか」

と仰せられた。しかし私は、

「わかりません」

と申しあげるよりほかなかった。聖者は、

「如来様はね、私どもの真正面に在して、私どもを常に見そなわしたもうのですよ。私どもが、南無阿弥陀仏と称うれば、如来様はそこから(聖者はその時お指で空中を指差され)ちゃんと聞いておってくださいますよ。礼拝すれば見ていてくださいますよ。意にお思い申しあぐれば知っていてくださいます」

聖者のお膝は次第に私の膝に接してくるので、私は次第に後方にさがっていった。「如来様」「如来様」と仰せられるお言葉が次第に熱を帯びてきました。私には如来様が未だ拝めないけれども、何か私の真正面に在して、私どもを見そなわしたもうように思えるのであった。聖者との初対面によって帰依渇仰するようになりその御講義が、如来様からの直説法のように思われて、有難くなりました。

(『ミオヤとのめぐり会い』鈴木憲栄著12~16頁参照)