ネズミと親しむ

あるとき、岐阜県大垣のお寺の一室で渡辺拙堂さんという信者がお側にいました。
弁栄上人「今に人がくるから、これをしておいて下さい」と渡辺氏に用事をいいつけられました。
拙堂さん「どうしてどなたかが訪ねてくるのがわかるのですか?」
弁栄上人「今向うの松原の松陰に馬が通っている。その後に訪ねてくる人が歩いている」といわれる。
しかし、室の中からは松原さえ見えません。しばらくすると不思議にも人が訪ねてきました。

また別のあるとき、拙堂さんが伊吹山にこもってお念仏して、上人のもとに帰ってきたときのこと。
上人はいつもの通り、米粒を左の手のひらにのせて、同じ左の親指と人さし指で掌の粒をとっては米粒に名号を書いておられました。
拙堂さんは上人のお部屋に入ろうとして、ふと隣室からみるとネズミが2匹います。その1匹は上人の手のひらに、1匹は膝に上って、平気で米粒をたべていました。
拙堂さんは驚き、そっとお部屋に入るとネズミはたちまち逃げてしまいました。
拙堂さん「上人、いまネズミがいましたよね」
上人「うむ、いた」
拙堂さん「なぜ私がきたら逃げたのでしょう?」

上人「それはお前が偉いからだ」

(『日本の光』181頁参照)