如来光明礼拝儀 現代語訳

香阿昭教訳 信仰を正しく育くむ祈りの言霊を弁栄上人はこの『礼拝儀』の中にすべて包含されました。ただし、その祈りの言葉も100年という歳月が経過し、現代人には馴染みのない言葉も使用されています。それを少しでも現代人にも理解して頂けるように現代語訳してみました。

「至心に帰命す」

至心に帰命す
法身 報身 応身の 聖き名に帰命し奉つる 三身即一に在ます最と尊とき唯一の如来よ 如来の在さざる処なきが故に 今現に此処に在ますことを信じて 一心に恭礼し奉つる 如来の威力と恩恵とに依て 活き働らき在ことを得たる我は 我身と心との総てを捧げて仕え奉らん 冀わくは一に光栄を現わすべき務を果す聖寵を垂れ給え

真実の心をもって〔如来さま〕に我身と心とのすべてを捧げてお仕えいたします。
〔宇宙とそこに存在するすべての根源である〕産みの如来さま、〔智慧と慈悲の光明によって摂め取り活かしてくださる〕救い育ての如来さま、〔人の身をもって道を示すお釈迦さま、すなわち〕教えの如来さま、〔その三身の如来さまとすべての徳と不離である〕聖なるお名前〔南無阿弥陀仏〕にすべてを捧げてお仕えいたします。三身が一体でいらっしゃる、最も尊く、唯一の如来さまよ。如来さまの在さない処はないのですから、今現にここに在すことを信じて、一心につつしみ敬って礼拝いたします。
如来さまの威力と恩恵とによって、私は〔肉体的にも霊的にも〕活き働らき存在することができているのですから、私の身と心とのすべてを捧げてお仕えいたします。ただ切に念願することは、〔如来さまの〕光明によって育まれたこの心の栄えを、ひたすら普段の〔行為と言葉によって〕現していくべき〔であると心得、そのような〕務を果すことができますように、聖なる恵みをお与えくださいませ。

「至心に勧請す」

至心に勧請す
三身即一に在ます如来よ 如来の真応身は在さざる処なきが故に 今我身体は如来の霊応を安置すべき宮なりと信ず 諸の聖者の心宮に在しし如く 常に我等が心殿に在らせ給え 今や己が身を献げて至心に如来の霊応を勧請し奉つる 霊応常住に我心殿に在まして転法輪を垂れ給え

真実の心をもって〔如来さまの聖なる身が私の心の宮〕にお宿り下るようお願い申し上げます。
〔産みの如来さま、育て救いの如来さま、教えの如来さま〕の三つの身が一体である如来さまよ。聖なる方へと感応し導きくださる真実本体の如来さまの身は、在さないところはないのですから、今、私のこの身体は如来さまの聖なる身を安置する宮であると信じます。
諸々の聖者の心の宮にいらっしゃるのと同じように、常に私たちの心の宮にも在してくださいませ。
今、私のこの身を〔如来さまに〕献げ、真実の心をもって、如来さまの聖なる身が〔私の心の宮に〕お宿り下るようお願い申し上げます。〔その〕聖なる身が永遠に私の心の宮に在して、高き導きをお与えくださいますようお願い申し上げます。

「至心に発願す」

智慧と慈悲とに在ます如来よ 教主世尊が六根常に清らかに光顔永しなえに麗わしく在ししは 内霊応に充給いければなり 我らも完徳の鑑たる世尊に傚いて如何なる境遇にも姿色を換えざることを誓い奉つる 願わくは常に慈悲 歓喜 正義 安忍 剛毅 貞操 謙遜 真実等の徳を体し 外は怨親平等に同体大悲の愛を以て佗に待し得らるるように恩寵をたれ給え

真実の心をもって〔如来さま〕に願いをおこします。
智慧と慈悲〔の光明〕を備えていらっしゃる如来さまよ。教主であるお釈迦様の〔眼と耳と鼻と口と身体と心の〕六根が常に清浄であり、光り輝くお顔は常に麗しくいらっしゃるのは、〔心の〕内に、〔如来さまとの〕聖なる感応が充ち満ちていらっしゃるからです。私たちは全てのお徳を備え、そのお手本であるお釈迦さまに倣って、どのような境遇であっても、常に麗しい表情と所作を保つことをお誓いいたします。〔私が今、如来さまに〕お願い申し上げることは、常に〔他を慈しむ〕慈悲、〔心が平和で喜びに満ちている〕歓喜、〔煩悩に支配される事なく、如来さまから与えられた使命に生きる〕正義、〔苦しいときも悲しいときも心穏やかに受け止める〕安忍、〔誘惑や煩悩に左右されることのない強い心の〕剛毅、〔如来さまのみにお仕えする〕貞操、〔慢心や愚かさに気付き謙虚に生きる〕謙遜、〔嘘偽りのない〕真実などの〔お釈迦さまが備えていらっしゃる〕徳を備え、対外的には好き嫌いの区別をすることなく、誰に対しても思いやりの愛をもって〔優しく〕接していくことができるよう、聖なる恵みをお与え下さいませ。

「至心に感謝す」

大慈悲に在ます我らが如来よ 如来が与え給える明き光と清きえい気と新しき糧とに依て 今日一日の務めを果したる恩徳を感謝し奉つる 又如来の神聖と正義と恩寵との光明を被むり今日聖意に契う務めを得たりしは全く聖寵の然らしむる処 深く其の恩徳を感謝し奉つる  注:原本では「えい」の字は、氵に影

真実の心をもって〔如来さま〕に感謝いたします。
大慈悲によって、私たちを〔お導き下さる〕如来さまよ。如来さまが与えて下さる、明るき光、清らかな〔大慈愛に満ちた〕空気と、新しき糧の〔恵み〕によって、今日一日の務めを全うすることができました。その恩徳を〔心より〕感謝いたします。また、如来さまの〔真理の源である智慧の〕神聖と〔聖意へと行動する〕正義と〔聖意へと育む〕恩寵との光明をいただき、今日、聖意に従う務めができたのも、全て〔如来さまの〕聖なる恵みが導きくださったものと、深くその恩徳を感謝いたします。

「至心に懺悔す」

法身と智慧と解脱の 三徳を備え給う如来に告白し奉つる 自身は現に是れ罪悪の凡夫 心の至らざるよりして作す可らざる罪を造り 作すべき事を怠るの罪に陥いれり 是れ皆な自らの過なり 実に大いなる過りなることを感じて 至心に懺悔し奉つる 今より後は悔い改め邪悪を捨て正善に就かんことを誓い奉つる 願くは恩寵に依て再び過に陥ること無く正しき人と為さしめ給え

真実の心をもって〔如来さま〕に懺悔いたします。
〔永遠不滅の本体である〕法身と〔すべてを如実に知る〕智慧と〔煩悩の束縛などなく自由自在である〕解脱、この三つの徳を備えていらっしゃる如来さまに告白いたします。私自身の〔心の様子や日々の生活の〕現実を〔見つめてみますと〕、罪と悪の凡夫〔なのです。〕至らない弱き心ですから、犯してはならない罪を作ってしまい、またすべき事を怠るという罪に陥ってしまいます。このような罪は全て、自らの過ちです。実に大いなる過ちであることを感じて、真実の心をもって懺悔いたします。今より後は、悔い改め、邪と悪を捨て、正と善の心でいられるように精進することをお誓いいたします。〔私が今、如来さまに〕お願い申し上げることは、恩寵によって、再び過ちに陥ることがないように、〔どうか〕正しき人へとお育てくださいませ。

「至心に回向す」

至善に在ます如来よ 我らは曾て心闇くして如来の在ますことを識らざりき 然るに如来の大悲招喚の声に驚きて 至心に如来に帰依し奉れり 願くは我らを無限の光明の中に永遠の生命を与え給え 又願わくは上は如来の聖寵を被り 下は一切の同胞に聖寵を頒つことを得しめよ 又我等を悪魔の誘惑よりさけて聖き道に向上むことを得しめよ また聖意を世の同胞にしらしめて聖きみ光の中に共に安寧を得んことを希がい奉つる

真実の心をもって回向いたします。
完全なる善を備えていらっしゃる如来さまよ。私たちは今まで心の闇が深く、如来さまの在すことを信じ実感することができませんでした。しかし、〔私たちを導き下さる〕如来さまの大いなるお慈悲〔より発せられる〕招喚の声に驚いて、真実の心をもって如来さまを信じお慕いすることができるようになりました。〔今、如来さまに〕お願い申し上げることは、私たちを無限の光明の中へと導き、永遠の生命を与えてくださいませ。また、さらにお願い申し上げることは、上は如来さまの聖なる導きを頂き、下は如来さまの子である全ての人々に、聖なる恵を伝えることができるよう力をお与えくださいませ。また、私たちを悪魔の誘惑から守り、聖き道に向上できるようにお導き下さいませ。また、〔如来さまの〕聖意を、世の中の同胞に伝え、聖きみ光の中に、共に安寧なる〔生活〕の実現を切に希望致します。